日本ミャンマー交流協会 AJMMC:

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ディスクローズの壁

MSEC1.jpgミャンマーの証券取引所開設について、日本が支援することに決まったが、ミャンマーには1996年に設立されたミャンマー証券取引センター株式会社(Myanmar Securities Exchange Center Co.,Ltd. )がある。国有のミャンマー経済銀行(Myanmar Economic Bank)と日本の大和総研が各50%ずつ出資して設立した合弁会社で、ヤンゴン市内スーレー・パゴダ近くにあるミャンマー経済銀行の建物の3階に入っている。(左写真はその入り口)

こういう場所があるということを知っているミャンマー人も少ないが、現地在住の日本人以外、ほとんど知られていない( 今年2月に案内を依頼したミャンマー人はそこにミャンマー経済銀行があることすら知らなかったし、ミャンマーで株式等の売買が行われるところはないと断言していた)。道路を挟んだ反対側にはミャワディ銀行(Myawaddy Bank)があり、こちらのほうが訪問客は多いように見えた。ミャンマー経済銀行の入り口にいた関係者も井戸端会議に夢中で、外国人の来客にもほとんど関心を示さない。銀行自体に訪問客が少ないのか、来客にむしろ驚いたような様子だった。

株式については、現状はわずか2社すなわち、Forest Products Joint Venture CorporationとMyanmar Citizens Bankの株式がここで取引されていると聞いた。後者は銀行だが、前者はミヤンマー木材公社(Myanmar Timber Enterprise)と民間投資家による55対45の合弁企業。
配当は行なっているが、担当者の話では株式の取引は(2社共に)あまり行われていないという。

MSEC2.jpg飛び込みにも拘らず応対してくれたミャンマー人スタッフによると、現在、2015年のアセアン統合に向けて法整備中であるほか、同社の現在の主力商品は国債で、今はまだ外国人は株も国債も購入できないという。

その国債だが、昨年、利率が改正され、2年もので8.75%(旧利率は10.5%)、3年もので9%(11%)、5年ものが9.5%(11.5%)になったと話してくれた(※ちなみに昨年は銀行の預金及び貸出利息も改正されている)。

ミャンマーの株式取引については、昨年、Myanmar Times誌が以下のような記事を掲載したことがある(Myanmar Times: Aug.29-Sept.4,2011参照)。

「公開会社にとっては透明性が基本的要求であるが、ミャンマーのビジネス環境で成功裏に企業を経営することと透明性は両立しないため、ほとんどの国営または民間企業は上場の選択を見送った。私企業にとって公開はシェアを奪われるばかりではなく企業管理の一部を喪失する一方、株主と税務当局に対して説明責任があるためである」。確かに、我々の実感としても現時点で企業経営者で会社の財務内容を公開するところはほとんどないし、そのような発想自体をもつところも少ない。のみならず経営そのものも幹部はほとんど家族・兄弟で固めるというのが一般である。この慣行を脱して証券取引所を機能させるのは容易なことではないと思うが、2011年1月20日に韓国の証券取引所幹部が訪緬して当局と協議しているというシンガポール発の報道(The Strait Times)が出たときは、韓国に席巻されるのかという懸念もあったが、それからの日本側の動きは早かった。

なお、ここでの取引は行われていないが、株式を一般に公開(販売)している会社は存在している。そのもっとも有名なミャンマー企業は、1991年に最初の公開申し込み行ったFirst Myanmar Investment(FMI)。前記、Myanmar Timesの記事によれば、本社事務所において(合計取引価格の)1%の仲介手数料をとって店頭で自社株の取引を行っている(ちなみに、この種の取引を行なっているのはここだけではない)。同社、担当によると株式の売買は毎日のように行われているらしいが、1日の取引規模は小さい(多くても数100株程度)という。FMIが1991年に株式を一般投資家に販売した当時は、1株1,000Ksで、4,900人以上が700万株以上を所有していた。現在は高値で取引されているが、実質的には価値は目減りしている。このため多くの投資家の関心は年次配当にあり、昨年は1株あたり125Ksの配当を行った(10%から40%の範囲というのがこれまでの実績)」という。また、同社の株式購入希望者は少なくないため、多くの人が待機しているような状態らしい。今のところ銀行預金、国債よりも高い配当率(新株について約17%前後)が魅力のようだが、配当率だけでなく投資対象が限られている現状では証券市場そのものの潜在的な需要は決して低くない。しかし(ミャンマー証券取引センターが取り扱う企業が10年以上にわたって2社以上に増えていないことからも)長年にわたる商慣習となっている家族経営とディスクローズの壁を破るのは容易なことではないのも事実。