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ミャンマーの数学教育事情(抜粋)

Kitamura.JPG高校の数学教師をしているK氏が、5年ほど前にミャンマーの数学教育事情を調査されたことがある。大学で数学教育を行ってきた教育省顧問(当時)及びヤンゴン大学の数学科教授などから聞き取り、その他の調査を実施。その詳細な報告書を提供してもらった。全てを掲載することは困難なので、抜粋した内容を紹介したい。 写真は旧教育省前

ミャンマーは5月末日現在で5歳を迎えた子どもは、以後16歳まで小学校5年、中学4年、高校2年の計11年間の初等・中等教育を受けることになるが、日本のように小中高が基本的に別々の学校で卒業するいった制度ではなく、小中高一体の学校もあれば、小+中、中+高といった学校もある。また生徒は自分の地区内にある学校に入学し、高校までは受験といった制度はない。そのため小学1年次を除いて(幼稚園教育のため)、小学2年から中高を通して第1学年から第10学年と呼ばれる。中学の最終学年、つまり第8学年にシッタン試験と呼ばれる高校でのコース分けを兼ねた試験が行われる。試験は必修6科目(ミャンマー語・英語・数学・一般科学・歴史・地理)について行われ、その成績と、本人の希望及び担任等の指導などで高校での文系か理系かのコースが決まる。現在は理系コースの人気が高い。

高校、すなわち第9及び第10学年は3科目(ミャンマー語・英語・数学)が必修で、理系コースが化学・物理・生物の3科目、文系コースが地理・歴史・経済・選択ミャンマー語の4科目が設定されており、自由に3科目を選択できる。但し、選択にはいくつの制約があるほか、学校によってはコースごとの制約を設けたりしている。

小中高の授業内容は全て国定で、教科書も全国統一のものが使用される。第8学年(中学4年)まではミャンマー語で書かれているが、第9・10学年(高校)の教科書は英語で記載されており、その内容もかなり多く難しい。数学について言えば、日本の中3から高校2年程度の3年分を2年間で学習する感じで、日本よりは1年くらい学習内容が進んでいる印象がある。ただ、日本だとレベルに応じて各種の教科書が用意されているが、ミャンマーは一種類しかなく、かつ全ての生徒が必修科目となっているため、苦労している生徒もかなり多いのではないかと思われる。

第10学年の修了試験は、大学入学許可試験を兼ねており、セーダン試験と呼ばれる。毎年3月に全国一斉に実施され、その結果で大学の進学が決まるだけではなく希望学科まで左右する最も重要な試験となっている。受験科目は高校で選択した6科目で、1日に1科目ずつ6日間に亘って行われ、1科目の試験時間は3時間。それまで学んだ全ての内容が網羅され、しかも英語で出題される。合格率は35%前後で、各教科とも100点満点中40点以上、合計240点以上が合格ラインとされる(もっともそれ以下でも条件付きで再審査の途もあり、かつ、得意科目に秀でていれば入学を許可するといったこともある)。

大学は自分が住んでいる州または管区内の大学に進学するのが原則。但し、学部・学科の選択はセーダン試験の成績で振り分けられるため人気学科に入学するには好成績をとらないといけない(つまり学科が同じであれば、ミャンマーでは、少なくとも入学時には、大学間格差はない。しかし同じ大学でも学科によって格差がある)。最も人気があるのは医学部で600点満点中、最低420点以上が必要とされる。海事大学、工科系大学、経済学部などがこれに次ぎ、卒業後の仕事にあまり直結しない文学部や理学部は近年あまり人気はない。

Kitamura 2.JPGヤンゴン管区には8つの大学が存在しているが、数学科があるのはそのうちの4大学で、ヤンゴン大学・ダゴン大学・東ダゴン大学・西ダゴン大学となっている。このうちヤンゴン大学は大学院化しており、学部生は残りの3つの大学に通っている。当時の数学科の学生数は、各大学とも500人定員で、ヤンゴン大学の修士課程に292人在籍していた。カリキュラムはみな同じで、教育省の数学科カリキュラム委員会が定める教育課程で概ね決められ、各大学はその範囲内で教科書や授業内容を選定する。

ヤンゴン大学の数学科には当時99名の教員スタッフが存在していたが、教授は1人だけ。その下に助教授が1人、講師が47人、助講師が12人。それにチューターと呼ばれる助手が38人といった体制で、他の学科でも教授は1人とのこと。写真の女性がヤンゴン大学の数学科教授で、かつて日本の大学に国費留学の体験があって大の日本好き。日本語もまだ話せる。同教授に詳細なカリキュラム等を教えてもらった。