日本ミャンマー交流協会 AJMMC:

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オニオンとアバカ

Onion 1.JPG製紙とパルプ製造のエンジニアである藤田氏は、ミャンマーエンジニアリング協会などでこれまでに3回セミナーを開催したことがある。25年ほど前に、当時は唯一のパルプ製造工場があったシッタウン(Sittoung)で、多数のミャンマーの技術者を指導したり、一緒に仕事したりしていた。その頃のエンジニアたちが今は国内各地の工場で幹部エンジニアとして勤務しており、藤田氏に同行した日本の企業関係者は「どこの工場に行っても藤田さんの知り合いばかりですね」と驚く。藤田氏は、1948年に早稲田大学理工学部応用化学科を卒業。王子製紙に勤務したが、戦後の解体で本州製紙に勤務(現在は王子製紙と合併)。ソ連からはじまって、アルジェリア・タンザニア・ブラジル・ヴェトナム・マレーシア・インドネシア・タイ・フィリピン、ミャンマー・中国といった各国で豊富な勤務経験をもち、今でも英語はもちろん、中国語・インドネシア語などを話す語学の達人でもある。毎年、いろいろな国からGreeting Cardが届く。その藤田氏が、農業灌漑省が所管するジュート公社(Myanmar Jute Industries)の依頼で、Non-Wood Pulpについてのセミナーをヤンゴン市内のMicasa ホテルで開催したことがある。 写真は司会者による説明と紹介を聞く藤田氏。

Onion 3.JPG藤田氏の東南アジアのコネクションがアバカ(Abaca)の苗の輸入のときに貢献した。アバカはマニラ麻とも言われ、コウゾ・ミツマタのように強い繊維を持ち国際的需要も高い。フィリピンでは輸出が厳格に規制されている。ミャンマーのパルプ関係者が、国内での栽培を希求してやまなかったが、藤田氏が自らの資金でインドネシアから研究用として農業灌漑省の研究施設に分けてもらいミャンマーに輸入することができた(左写真参照)。現在はバゴーで栽培されている。「あれから一度もどうなっているか報告が来ないけど・・ちゃんと育っているのだろうか」と時々不満を漏らしているが、そんなものだと達観しているので別段怒るわけでもない。

 さて、非木材パルプに関するセミナーだが、出席したミャンマーのエンジニアたちを驚かせるものがテーブルに並んでいた。サラ金のポケットティッシュ、コアレスのトイレットペーパー、バインダーなどで、なかに大きな皮付き玉ねぎ数個も置いてある。セミナー自体はPower Pointを使って行われたが、特定の頁のところで並べられた小道具が効果的に使われる。しかし玉ねぎの出番は最後までない。 気になっていたところ、原料として使った残渣は堆肥として活用でき、自分の畑で使って玉ねぎを育てたらこんな大きくなったと説明。非木材パルプは無駄がないといいたかったが、直径は12cm以上の大玉で、ほぼ全員がその巨大さに驚嘆の声をあげた。ミャンマーで市販されている玉ねぎは直径4cmから5cm程しかない小さいもので、2倍以上もある大きさのものをたぶん見たことがない。言われるまで参加者は玉ねぎとは思っていなかった。パルプ製造の技術者といっても農業灌漑省の職員であり、一気に関心が玉ねぎに移り、残渣を使えばこんなに大きくなるのかといった質問も出る。ミャンマー料理には玉ねぎは欠かせない素材のひとつであるためみんな興味がある。 非木材パルプの話が最後に来て玉ねぎ栽培と肥料の話に変わってしまい、まるで農業指導者による玉ねぎ栽培セミナーが行われたような印象になっていた。 思惑通りの展開ではなかったが、日本からわざわざ玉ねぎ数個を持参した価値はあった(と思われる)。

余談だが、ミャンマーは玉ねぎの輸出国で、隣国のタイやバングラデシュ、中国などに輸出されている。主要な産地はマグウェイなどの乾燥地帯。昨年の今頃は、卸価格で1ビス(約1.6kg)1400kyatsしていたものが今年は150kyatsと暴落しているという。